六つ下の同級生

LINEのホーム画面に、昔好きだった子のストーリーが上がってた。ストーリーを押すと、足跡着くしな....と思い開かないことにした。

久しぶりに彼のことを思い出す。彼と出会ったのはとある喫茶店。当時私は大学院生で、彼は浪人生、6つ下だった。友達に6つ下の浪人生と出会ったーって話すと、「どこで出会うの??」と不思議がられた。私も正直わけが分かりません..…。6つも離れた子を好きになるだなんて。私はカウンターに座ってて、彼が隣に座ったのがきっかけだった。サブカル風でマッシュルームカットの大学生風の格好だった。変な人が隣じゃなくて良かったと思いつつ、また飲み物を飲む。ダラダラと喫茶店で過ごす時間が私は好きなのだ。

ふと隣を見ると、隣の男の子は「絶望名人カフカ」を読んでた。私はその時カフカの「変身」を読んできて、シンパシーを感じてしまって、思わずもう声かけてしまった。
「ねえ、カフカ好きなの?」って。
そこからカフカの話で盛り上がってしまった。本当
に意味が分からないくらい楽しかった。

カフカでこんなに話せるのかと不思議だった。哲学の話もしたし、AIやテクノロジーの話もした。一緒に話す時間が本当に楽しかった。彼と一緒にいると、トゲトゲとした自分の気持ちがどんどん穏やかになっていって、なんだか優しい気持ちになれ
た。こんな気持ち初めてだった。

スマホの充電が切れてた私は、彼からモバイルバッテリーを借りて、少し充電して、ラインを交換して駅で別れた。

平安貴族が着ている装束や、ヨーロッパの貴公子が着る衣装が似合いそうな、儚くて少し寂しそうな人だった。

授業をサボって行ってよかったと思った。彼はその時浪人生で、予備校には行かずに自宅で宅浪をしているらしい。有名な中高一貫校に通ってたものの、高校1年生で出席日数が足りず、留年するくらいなら退学を選んだそう。で、大検(のようなものと言
ってた)を取っていま受験生だそう。

それから彼と別の喫茶店で会うことにした。お互い好きな本の話をした。楽しかった。彼と一緒にいるとなんでこんなに優しい気持ちになれるのか不思議だった。

また別の日に会った時、ごはんを食べたあと、彼と初めて会ったあのお店に行った。彼とおしゃべりしたり、一緒に同じ本を読んだりする時間が愛おしかった。浪人生が1~2週間越しに会ってくれるのは
心配したけど、自己管理ができそうな人だったからそこは口出さないことにした。会う約束をしていたんだけど、彼が体調悪くなったとかで会う日が流れた。

そこからしばらく連絡を取らなかった。でも、不思議と、心が通じてるような気がして、私が彼のことを思うとき、彼も私のことを思ってくれる気がした。
そしたらふと、彼からよそよそしいラインが来た。思わず私は会いたいと言ってしまう。僕もずっと会いたかったと言ってくれて嬉しかった。
その時私は酷く大変な課題を抱えていて、辛い時が何度もあったけど、彼のことを思うとなんだか幸せな気持ちになった。

その後2回くらい会ったかな?楽しい時間
を過ごしたけど、最後ひどい別れ方をした。申し訳ないと思う。けど、あんな別れ方をしなければ、私また連絡取っちゃいそうだから、仕方ないのかもと自分に言い聞かせる。

もう遠くにいってしまった。これからどんな事でもやれてしまう若い彼が羨ましい。すれ違うはずもない、2人の運命が交差して出会ったのは奇跡だと思う。
もう会うこともない彼のことを思う。きっと彼も私のことを思ってくれているような気がする。 彼はどこか悲しげで、寂しそうだった。けど、あなたを大切に思ってくれる人はどこかにいるから、どうか悲しい顔をしないで欲しい。何も出来ないし、もう連絡をとることもないだろうけど、あなたの幸せを願ってます。


そして、そんな彼がラインのストーリーをアップした。というより、LINEミュージックを更新したから連動しただけなんだろうけど。

その音楽をひっそりと聞いてみた。そして何を思ったか、それは私だけの秘密にしたいと思います。

おわり。